『魔法のコンパス』を読んで 西野亮廣 著


 書店に足を運んでも、自分からは決して―たぶん・恐らく―手にとらない書物というものがある。今回紹介した本もそのような1冊。知り合いのおすすめで読んでみた。『魔法のコンパス』(西野亮廣・著/主婦と生活社・刊)である。著者については、ほとんど情報をもたなかった。あの「よしもと」の芸人としてテレビによく出ている人だそうだが、あいにく普段テレビを観ないこともあって。

★タイトルを読んだだけで、中身が想像できる

 この本は1ページにおよそ360文字のゆったり構成、天地に広い余白をとり、窮屈感がない。目次にのる小タイトルで1ページをさき、大きな文字が並ぶ。たとえばこんな具合。「お金を稼ごうとすると、どこから手をつけていいか迷うけど、信頼の面積を広げるという風に考えると霧が晴れる。」

「通知表でいえば「オール3」という状態が最も効率が悪くて、他の教科なんて「1」でいいので、「4」を「5」にする作業をしたほうがいい。」

 などなど、などなど。

 タイトルを読んだだけで、中身が想像できてしまう。読んでいて、内容が何も頭の隅にひっかからない。意味がよくわからなくて読み返すということは、まずない。咀嚼せずに、するする喉を通って落ちてゆく、まるでゆるいお粥のように。

★はまっている娯楽をやめさせるには、それ以上の娯楽を

 いえ、決してけなしているわけではない。読みすすめればすすめるほど、止まらなくするするとお粥のごときこの書物は、喉元を小気味よくすべり落ちてゆく。 

 どんな風に小気味よくすべり落ちてゆくか。たとえばこんな風だ。

「いじめはなくならない。なぜならいじめっ子にとって、いじめは娯楽だからだ。それをやめさせるには、今、はまっている娯楽(いじめ)よりもっと面白い娯楽を与えてやること」

「先生の話をきかないから、教室でのスマホを禁止しているが、スマホの使用を禁止する前に、(先生は)発声の練習をして、人を惹き付けるしゃべりの訓練をして、人を惹き付けるビジュアルの努力をして、うんぬんかんぬん(省略した)をして今の流行りを言えるようになることが先じゃないかな?」

★「他者と同じでないと」に囚われると身動きできない

 私たちは小学校から、否、幼稚園児の頃から人と同じことを強いられてきた。他の人と違うことをするのは間違っていることと、ずっと刷り込まれてきた。

 私自身、社会人といわれる世代になってからは、常に他者と同じであることが正解ではない、と自らにいい聞かせてきたつもりだが、それでも、はたと気がつくと「他者と同じでなければ」に囚われて身動きできなくなっていることがあった。著者はその壁をやすやすと乗り越え、自由な発想を披露してくれる。それが、「なるほど」とうなずかせる。

 行き詰まりを感じて出口を探している若者たちに、ぜひともおすすめしたい1冊だ。一方、長く人生を歩んできた諸兄姉にとっては、今までと違った考え方を、堅くなった頭の中に注ぎ込んで刺激を与えるのにおすすめの1冊だと思う。

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